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猫山の化け猫退治
(ねこやまのばけねこたいじ)

八鉾村の三坂にそびえる猫山の名前の由来は諸説ある。
山の形が猫に似ているからというそのまんまのもの、猫に形が似たネズミ除けの石が山中に転がっているというもの、山中の石が猫に化けるからというかわいらしいものまで。
しかし中には
人を喰う化け猫が棲んでいたからという恐ろしいものもある。

その化け猫は昔、猫山に住み着いており、山に入る人間どもを食い殺していたそうだ。
同じころ東城の川東に腕利きの鉄砲猟師がいた。普段は鳥獣を狩っていたが、それにも嫌気がさしてきたある日、ひとつ有名な猫山の化け猫を退治してやろうと思い立ち、さっそく鉄砲片手に猫山に乗り込んだ。
しかし何日経っても、化け猫は姿を現さない。もう帰ろうかと思った幾日目かの晩、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お父さん、お父さん」
見ると提灯を下げた子供の姿が。それは見紛うことなき自分の息子だった。
「お母さんが急病じゃけえ、はよう帰りんさい」
そう呼びかけながら、息子はどんどんこちらに近づいてくる。
これはおかしい。猟師は目を疑った。俺は家族にどんなことがあっても山には近づくなと念押ししたし、子供が一人で入って俺の居場所を突き詰められるわけがない。もしやあれは息子に化けた人喰い猫なのでは?
猟師は一寸ためらったが、意を決して鉄砲を放った。
ズドン!弾は息子に命中する。
「ギャー!!」
提灯の火が消えると同時に聞こえた悲鳴は、息子の、いや人のものではなかった。
夜が明けると猟師は辺りを探し回ったが、死骸や提灯はどこにも見当たらない。あるのは血糊、そこから点々と続く血の跡。それを辿っていくと、ふもとの家で途切れていた。猟師は家の人に尋ねる。
「ゆうべ、お宅で何)変わったことは無かったですか?」
「はい、婆さまが雪隠(トイレ)に行ったおり、物干し竿で目を突いたと言って寝込んでおります。」
不審に思った猟師は、半ば強引に見舞いに向かうと、お婆さんは布団を頭までかぶって姿を見せない。猟師は思い切って布団の上から一発鉄砲を撃った!
家の人はびっくりして布団を剥がすが、そこにいたのはお婆さんではなく、
大きな山猫だった。猟師は床下を見てみろと教え、床板を剥がしてみると、そこには無残にも化け猫に喰われ骨だけとなったお婆さんの死体があったという

【備考】
この話では化け猫は退治されたふうに描かれていますが、果たして本当に倒したのか、化け猫は1匹だけなのかは明らかにされていません。

別の話では、猫山のふもとで立ち小便する男をからかうような化け猫が出てきますが、そんなユーモアある奴ばかりではないでしょう。

近代に入ると化け猫も姿をくらまし、平成期には猫山はスキー場として多くの人々に親しまれています。

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