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坊主斬り

昔、東城から西城にかけての村々が飢饉に襲われ、多くの人が飢えに苦しみ死んでいった。お寺とて例外ではなく、粟田村の大奥寺のお坊さんも毎日ひもじい思いをしていた。
ある日、お坊さんは隣の竹森村の庄屋へ法事に訪ねた。庄屋はこの飢饉の最中でも多くの蓄えがあり、お坊さんにも御馳走が振る舞われた。酒も用意されたが、なにしろお坊さんは腹ペコである。酒の勧めも断り、お坊さんはひたすら食事にがっつき、特に好物のそばは何杯もおかわりして口に運んだ。
こうして文字通り満腹となって寺に帰る道中、物陰から二人の侍が現れた。二人ともすっかり痩せこけており、何日も食べていないことが一目瞭然であった。
侍のギラリと光る眼が、パンパンに膨れたお坊さんの腹を捉えた。
「坊主、その腹はどうした」
片方の侍が、お坊さんに尋ねる。
「これはなあ、美味いそばを山ほど食べてきたんだよ。」
お坊さんは、食べ過ぎて苦しそうな腹をさすりながら答えた。
二人の侍はしばし目を合わせたが、やがて片方が意を決したかのようにお坊さんの背後に回り、
「坊主、許せ!」
そう言った刹那、刀で斬り殺してしまった。
そしてもう一人の侍が、こんどは腹を切り裂き、胃を取り出し開けると、食べ過ぎてまだ消化しきれていないそばが残っていた。二人はそれをかき出し、近くの川で洗い、一心不乱にむさぼった。
やがてそばを食べきった二人は、お坊さんを斬った刀を洗ったのち、そこから立ち去ったという。
その後、この凶事が起きた峠道は「袈裟斬り峠」と、侍が刀を洗った池は「太刀洗」と呼ばれるようになったという。
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