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三神線の最高地 道後山駅きょう開業
―山間には不釣合なモダン姿 名勝紹介の使命―

三神線全通による地元民の要望が叶って、今21日からいよいよ営業を開始する道後山駅は、米子鉄道建設事務所、三神線第5工区主任淘技手現場監督で総工費25,000円により昭和11年9月12日起工、同年11月18日竣工という短期間で、真に昼夜兼行工を急ぎ、建物は同駅が道後山公園紹介のためとて最初から設計に工夫を凝らし、山間にはむしろ不釣合と思われる人造モルタル仕上げという思い切った趣向で、三神線中類いないモダン調である。
海抜標高800メートル(実際は600メートル。誤記?)三神線の最高地で、備後落合・小奴可隣接両駅と恰も(あたかも)上り下りの峠茶屋といった感じのする”高原停車場”だ。
東は耳木谷山、西は村造村の一本松山、南は櫛山、北は遥かに岩樋山を望むという、周囲をぐるりと山岳に囲まれた二十戸くらいの人家が集団したところだ。

大阪朝日新聞広島版1936年(昭和11年)11月21日付

盛大な開業式 ―きょう八鉾村で―

新駅開業の比婆郡八鉾村(やほこむら)では、21日午前11時から広島県庁・広島鉄道局米子事務所など賓客300余名招待、盛大に開業式を挙行する。なお祝賀協賛会では、小学児童各種団体老若男女がローカル色豊かな余興演芸で歴史的式典を祝賀すべく盛りだくさんのプランで意気込んでいる。

来て見て驚く ―新任の駅長さん―

三神線道後山駅は定員四名。駅長角利八氏は八本松駅から、助役原寅一氏は徳山駅から何れも栄転したもので、
「鉄道地図に表れた海抜標高800メートルという高原停車場だから、定めし山間の無骨な駅だろうと思っていたのですが、都市駅を凌ぐモダンな遊覧停車場であることに、実は魂げた次第です。各方面とも連絡協力、今後大いに地方開発・名勝紹介・宣伝に努めるつもりです。」
と包み切れぬ喜悦を満面にたたえて語った。

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