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小奴可の村長
(おぬかのそんちょう)

今から100年ほど昔、広島の県北に
小奴可(おぬか)という村がありました。
この村の村長さんはたいそう元気なお方で、笑う時も怒るときもいつも大声をあげていたそうです。​​

ある日村長さんは遠くに出かけることとなり、庄原から汽車に乗ることにしました。
汽車が動き出す前に車内で弁当を食べ終えた村長さんは、ふとトイレに行きたくなってきました。
ちょうど車掌が通りかかったので「まだ汽車は動かないか」と聞くと、「ええ、まだ大丈夫ですよ」という返事。
村長さんは一安心して汽車を降り、駅のトイレへと向かいました。

用を足し終え一息ついたそのとき、突然「ポオーーッ」と発車合図の汽笛が聞こえてきました。
慌てて村長さんが駅に戻ると、今まさに汽車が駅を出ようとしているではありませんか!
たちまちスピードを上げていく汽車。このままでは村長さんは駅に取り残されてしまいます。

村長さんは息せき切って列車を追いかけながら、こう叫びました。

「待ってくれ~、その汽車止まれ~!
わしは小奴可の村長じゃあ~~!」

この叫びが届いたのか、汽車はそこで止まってくれ、村長さんは無事乗り込むことができましたとさ。

この話は乗客や駅員を通じて
たちまち広がっていき、
やがて「
小奴可の村長」は無茶や無理を通す人を指すことわざとして、備北地方一帯に知れ渡るのでした。


昔こっぷりどじょうの目

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【備考】
このお話の村長さんが誰のことなのか、実はよく分かっていません。
西城の郷土史研究会の調べでは、話が広まり始めた時期や親族の証言などから
8代目村長松尾正八氏が有力だとしています。
(他の候補として9代目田辺隆氏、10代目黒田謙一氏、12代目柳生一身氏)
松尾村長は非常に活発豪快な方で、小学校の運動会でも来賓席から大声で応援の声をあげていたそうです。
また話の中身も「急病人が出たので降ろすのを手伝ったから乗り遅れた」「駅は庄原ではなく中三田」といった様々な異説があります。

叫んだのは貴方?松尾正八肖像

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