11日・12日と間断なく降りつづいた吹雪にはさすが寒さになれた県北比婆っ子も震えあがった。とくに比婆郡内の高冷地芸備線道後山駅・備後落合駅一帯は本年度最高記録の約1メートルの積雪となりダイヤはすっかり乱れた。芸備線下り広島行811列車などは12日午前9時東城駅を30分遅れで発車したが、上り列車の延着により次の八幡駅で約1時間30分の停車、やっと出発したと思ったら小奴可-道後山駅間の要所、比婆郡東城町小奴可字日野原付近で深雪のため汽車はストップ、二度・三度と前進を試みても車輪はいたずらに空転するばかりで、ついに小奴可駅まで後退してラッセル車の救援を待つことになり、同駅では気の毒に思ったか車中の乗客へお茶のサービスをするという一幕があってラッセル車の通過後約3時間遅れて広島へ出発した。
道後山駅前(比婆郡西城町高尾)の古老は「大体この地方は雪の多い所ですがこんなに降ったのは11年ぶりぐらいです」と驚き、大雪の年は豊作といわれるが昨年に負けないほどの豊作になればよいがとも語っていた。
中国新聞1956年(昭和31年)2月14日付