利用者減り赤字続く
帝釈峡・国鉄「湖畔の家」委託業者、返上申し入れ
国定公園帝釈峡の国鉄「湖畔の家」を委託経営している日本交通観光社(飯田雄四郎社長・本社東京)が、赤字を理由に岡鉄局へ返上を申し入れ、施設も開店休業の状態となり、同局でも存廃を検討している。
「湖畔の家」(大広間4・個室1・64人収容)は、国鉄が32年5月、神石郡神石町の請願で総工費600万円をかけて神龍湖岸に建て、1泊ベッド200円・個室250円で、同町に経営を委託したが、経営難で投げ出したため、40年7月から同社が代わって経営している。
当初の計画では、年間5,000人の利用客を見込んでいたが、神石町経営当時でも2,000~3,500人しかなく、同社の手に移ってからはさらに1,400~1,900人に減り、毎年30万円前後の赤字を出しているという。現在では建て物も一部が雨もりし、浴場も昨年5月から破損したまま使用出来ず、全く開店休業のありさま。同社広島支店の秋山調査役は「とても満足なサービスが出来る状態ではない。岡鉄へ本年度から返上したいと申し入れたが、待ってくれということなので、利用客から申し込みがあれば、不便をかけないようにちかくの旅館に国鉄料金で泊めている」と言い、さらに「最近設備のよい旅館がふえたので、思い切った改築をしなければ対抗出来ないだろう」と、経営を続ける意思のないことを表明している。
中国新聞1969年(昭和44年)6月29日付
国鉄「湖畔の家」を閉鎖 帝釈峡
国定公園帝釈峡を訪れるハイカーたちに親しまれてきた神龍湖畔の国鉄「湖畔の家」(神石郡神石町)が、民間への払い下げが決まり、13年間の幕を閉じる。
「湖畔の家」(64人収容)は岡山鉄道管理局が32年5月、総工費600万円をかけて建設、神石町に経営を委託し、安い料金で研修会や若者たちの宿泊にに当てていた。しかし、経営難で40年7月から日本交通観光社(本社東京、飯田雄四郎社長)が代わって再度委託経営していた。その後も利用客が少なく、毎年30万円前後の赤字を出し、昨年5月同社は国鉄へ返上を申し入れた。
岡鉄局では建て物もいたみ、浴場もこわれており、改修にかなりの経費が掛かるうえ、直営の意思もなく、付近にデラックス旅館も数軒出来て「役目を果たした」と閉鎖を決めた。閉鎖については、地元の神石町や比婆郡東城町でも反対が多く、継続するよう陳情していたが、結局、公共機関に引き受け手がなく、このほど日本交通観光社との契約を解除して閉鎖に踏み切った。
中国新聞1970年(昭和45年)7月26日付